「英語の勉強するから、iPadのパスワード解除して」
朝、息子がそう言ってきた。パッと見はやる気があるようにも聞こえるし、親としてはちょっと嬉しい。でも、こちらには前日の状況が見えている。
iPadのスクリーンタイム──それは、子どもの“行動履歴”を淡々と映し出す鏡のような存在だ。
子どもの言葉を信じたい。でも、実際の「時間の使い方」を知ったとき、僕たち親はどう対応すべきなのだろう。
今回は、英語学習アプリを2分だけ開いたあと、ネトフリを6時間観ていた息子との、ある朝のやりとりを記録しておきたい。
スクリーンタイムで見えてくる「現実」
その朝、僕はどこかピリついた雰囲気を出していたと思う。息子は空気を読み、なかなか話しかけてこなかった。やがて、ちょっと勇気を出したような声で言ってきた。
「パパのお弁当、シンプルだね」
ご飯の真ん中に梅干しをぽんと乗せただけの、いわゆる“日の丸弁当”。おかずはウインナーとオムレツ。まさに必要最低限だけど、僕にとっては落ち着く構成だ。
その直後、「英語の勉強したいから、iPadのパスコードを解除して」と頼まれた。
……けれど僕は、すぐにピンときた。テレビではもうネトフリもアマプラも見られないように設定してある。目的は“英語”ではなく、きっと“動画”だ。
静かに聞いてみた。「昨日、何時間くらいネトフリ観てた?」
息子は「……3時間くらい」と答えた。明らかに少なめに言ってるのがわかる。
「最終確認な。本当にそれでいいんだな?」
そう言ってから、iPadのスクリーンタイムを開いた。
そこに表示されていたのは──
- Netflix:6時間
- 英語アプリ:2分
「お前は……やりすぎてしまったようだ」と、僕は静かに呟いた。
怒るよりも「一緒に見える化」
ちょうどその時、リビングの方から妻の「はぁ?」という声が聞こえてきた。
不思議なもので、女性が怒るときって、なぜか第一声が「はぁ?」になることが多い気がする。
場の空気が悪くなる前に、僕は息子を別の部屋に連れて行った。
そこで改めて、スクリーンタイムの画面を一緒に見ながら静かに話す。
「昨日、英語アプリは2分で、ネトフリは6時間だった」
「その前の日は、英語1分、動画3時間」
僕は問いかける。
「この数字、どう思う?」
「3時間動画を見た日、塾も休んでたよね」
「時間が動画に吸い取られてる。自分でもそう思わない?」
僕は叱るために言っているんじゃない。
事実を、一緒に“見える化”したいだけだ。
「どういう時間の使い方をしたか、自分でわかるよね?」
「この比率、おかしいと思わない?」
「改善しようと思わない? いや、改善しなきゃいけないよね」
強く責めるわけでもなく、あくまで対話として。
でも、目をそらさないように。
調子がいい、でもそこが子ども
僕の問いかけに、息子は「はい、改善します!」と、思いのほか元気よく答えてきた。
たぶん、僕が怒っていないことがわかって安心したのだろう。
そして、またネトフリを観られるかもしれないという希望も、どこかにあったのかもしれない。
あの朝の、不安そうに僕の顔色をうかがっていた姿は、いったいどこへ行ったのか。
心の中で思わずツッコんでしまった。
――調子のいいやつめ。
でも、そういう反応ができるのも、子どもだからこそ。
正直で、単純で、まだまだ手がかかるけど、それでいい。
たった一言の「はい、改善します!」に、親として少しだけ希望を感じた朝だった。
スクリーンタイム管理のヒント(おまけ)
今回のようなやりとりを経て、「どうやって子どものスクリーンタイムを管理したらいいんだろう」と感じた方も多いかもしれません。以下に、我が家で実践している方法やポイントを紹介します。
iPadの「スクリーンタイム」機能を活用する
- アプリごとの使用時間を確認: YouTubeやNetflix、学習アプリなどの利用状況が日・週単位で見られます。
- 使用時間の制限: 「App使用時間の制限」で、動画系アプリの利用を1日1時間などに設定可能です。
- 休止時間: 夜間や勉強時間にiPadを使えないようにする「ダウンタイム」の設定も便利です。
テレビでの動画視聴は制限をかける
我が家では、テレビでのネトフリ・アマプラ視聴を制限し、アカウントごとにログイン管理しています。テレビアプリの削除やPINコードの設定も効果的です。
「制限」より「一緒に使う」スタンスも大事
一方的な制限では反発されがちです。だからこそ、使い方やルールを一緒に話し合って決めることも大切。
- 「まず英語アプリを10分やったら、動画OK」
- 「1週間で合計○時間以内にしよう」
- 「スクリーンタイムの記録を一緒に振り返る」
こうした共有の姿勢が、子ども自身の“気づき”につながるかもしれません。
親子の信頼関係を保ちながら、適度な管理と対話で“デジタルとの付き合い方”を学んでいけたらいいですね。
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